サリドマイド薬害事件とは?



1960年代に日本国中で大きな話題となったのが『サリドマイド薬害事件』です。サリドマイドとは西ドイツの製薬会社・グリューネンタール社が開発した睡眠薬で、我が国では大日本製薬が「イソミン」という名称で販売していました。

そのサリドマイド薬を服用した妊婦から生まれた子供に四肢奇形などが発生したことから、薬剤と障害の因果関係が判明したのです。

サリドマイド薬は製造販売の中止や回収が行なわれたものの、被害者のみなさんは現在もさまざまな障害に苦しんでいます。


サリドマイドとはどんな薬なのか?

サリドマイドは西ドイツで開発された「非バルビツール系の鎮静・睡眠薬」です。日本では睡眠薬「イソミン」や胃腸薬「プロバンM」などの16品目が、医療用および一般用医薬品(経口薬)等として販売されていました。

販売当時は妊婦や子供が服用しても安全無害で副作用がないと宣伝されたため、悪阻(つわり)で夜よく眠れない妊婦さんが服用するケースもありました。

サリドマイド薬害事件



安全無害なはずのサリドマイド薬を服用した妊婦さんから、重度の障害を持つ新生児が誕生し社会的な大問題となったのが『サリドマイド薬害事件』です。妊娠初期にサリドマイド薬を服用した女性からは、四肢に奇形がある赤ちゃんが誕生する因果関係が判明したのです。

サリドマイドによる薬害は「サリドマイド胎芽病」といいます。その薬害による副作用や障害としては、多発性神経炎(手足の感覚がなくなる)、中枢神経刺激症(神経系の障害)などがあります。


ほかにも重度の四肢の欠損である無肢症や海豹肢症(手足の欠損、発育不全)、奇肢症(手足の奇形)、母指三指節症(指の欠損)、難聴(聴力の低下)、無耳症(耳の欠損)、小耳症(耳の奇形)などが挙げられます。

さらに、サリドマイドには心臓・腎臓・腸などの配置異常を起こす薬害も判明しています。これほどの副作用がある医薬品が、なぜ医療用または一般用として販売されていたのかと疑問に感じる人は多いのではないでしょうか。

被害者は世界で5800名



サリドマイドによって催奇形性が起こる原因については、2010年に東京工業大学や東北大学などの研究によりそのメカニズムが発見されています。サリドマイドはセレブロンというタンパク質と結合すると、その働きを阻害する性質があるという発見です。

その結果、サリドマイドを投薬すると細胞内の遺伝子の変化が起こり重度の障害などの副作用が起こるというわけです。


サリドマイド薬害によるサリドマイド児の発生数は全世界で約5800名、西ドイツで3049症例、イギリスで456症例、カナダ・スウェーデンで100症例超、日本でも309症例が確認されています。ただし、この数字は全世界をカバーした正確なものではなく、未確認の被害者はもっといると考えられています。

サリドマイド児の死亡率は約40%に達しているといわれています。日本で確認されている309症例以外にも未確認および未出生(死亡)のサリドマイド児は多数存在し、合計では1000症例を超す考える研究者もいるのです。

サリドマイドとレンツ警告

このようなサリドマイドの薬害が日本で広がったのには、薬の持つ副作用以外にも大きな要因があります。それが西ドイツの大学講師レンツ博士による警告が日本で活かされなかったという問題です。

レンツ博士は1961年にサリドマイドと奇形の新生児の因果関係を学会で発表して警告を行ないました。その警告によりヨーロッパで薬の製造販売の中止や回収が行なわれたのに対し、日本では販売が中止されたのみで十分な回収が行なわれないなど、レンツ警告はあまり活かされなかったのです。


サリドマイドの新たな方向性



サリドマイド薬害事件の発生後、一般の消費者には「サリドマイドは危険なもの」というイメージが定着しました。米国ではサリドマイド薬害事件を受けて「食品・医薬品・化粧品法」の改正が行なわれ、医薬品の承認には有効性を確認するための2回の試験が必要となっています。

1967年には日本でも医薬品の承認には、米国と同様に「適切で十分に制御された2回の試験」を行ない有効性を示すというように法改正がなされました。このように法改正が行なわれるほど、サリドマイド薬害事件の衝撃は大きかったといえるかもしれません。

再評価が進むサリドマイド

しかし、現在ではサリドマイドに対する再評価が進んでいます。1965年にイスラエルでサリドマイドの処方がハンセン病の改善に効果がみられるという報告がなされています。FDA(米国食品医薬品局)は1998年にサリドマイドをハンセン病の一部症状の一時抑制薬として条件付きで承認しました。

ほかにも、サリドマイドはがん患者の腫瘍壊死因子の阻害作用や、がん組織の毛細血管の阻害作用、骨髄がん(多発性骨髄腫)の抗がん作用などの効果があると認められています。このような効果への期待から、日本でも患者や家族が諸外国からサリドマイドを用いた医薬品の個人輸入をするというケースがみられました。

日本におけるサリドマイド薬

上記のような再評価を受け、2005年に厚生労働省はサリドマイドを「希少疾病用医薬品」に指定しました。この指定により治験が行なわれ、2008年にはサリドマイドは多発性骨髄腫の治療薬として製造販売が承認されています。

厚生労働省はこの医薬品の使用に関して、薬害防止の観点から「サリドマイド製剤安全管理手順」を遵守するように医療機関への注意喚起と周知徹底依頼を出しており、徹底した遵守が求められているのが現状です。

<サリドマイド薬害事件とは?のまとめ>

  • 西ドイツで開発された鎮静薬、睡眠薬が事件の発端
  • サリドマイド薬は重度の障害を引き起こす原因となった
  • 主な薬害として子供の四肢奇形、内臓の配置異常がある
  • 薬を服用した妊婦の新生児に手足の欠損などが発症
  • サリドマイド被害は全世界で5800名にのぼる
  • 日本でも309症例が確認されたが被害はもっと多いとされる
  • 最近では抗がん作用などサリドマイドの再評価が進んでいる

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