いわゆる正社員ではなく、派遣社員として勤務する薬剤師も増えてきました。
派遣という働き方に関しては、負の面ばかりが強調されがちですが、薬剤師の場合はどうなのでしょう?
薬剤師が派遣社員として働く場合の年収相場やメリット・デメリットについてお伝えします。
目次
派遣薬剤師は正社員より年収が高いって本当?
求人情報を見ると、派遣社員の時給はかなり高く設定されています。
単純計算では派遣社員のほうが好待遇のような印象を受けますよね。
年収でみると、正社員と派遣社員にはどのくらい差があるのでしょうか?派遣薬剤師の働き方とともに解説します。
薬剤師の派遣って、どんな働き方?
そもそも派遣社員とは、勤務をする職場と直接的な労働契約を結んでいない労働者の事を指します。
派遣社員が雇用されるのは、派遣元である人材派遣会社です。
薬剤師の場合も同様で、「人材派遣業者の従業員である薬剤師が、派遣先である薬局や病院などの指示・命令のもとに業務を行う」という働き方になります。
派遣先は派遣会社に外注費として費用を支払い、薬剤師には派遣会社から給与が支払われます。
職場に派遣される際に、その条件がきっちりと提示されるため、残業が少なかったり、休みが取りやすいといったメリットもあります。
福利厚生などは派遣元の人材会社が負担するのが一般的ですが、派遣先の福利厚生も併せて受けられるケースもあります。
派遣薬剤師は高収入!その理由は?
派遣薬剤師の時給が高い理由の一つに、雇用の不安定さがあります。
正社員にせよ、パートタイマーにせよ、会社が直接雇用している従業員は、なかなか解雇することはできません。
いったん雇うと、業績不振であっても人員調整がしにくいのです。
その点、派遣社員はもともと短期間の契約を繰り返し更新していく雇用形態ですから、人員が過剰になった場合は、契約を更新しなければいいだけです。
会社にとっては、多少高い時給を払ったとしても使い勝手がよく価値があるのが、派遣社員という存在なのです。
また正社員の採用のコストを抑えられるというメリットも、派遣社員の時給のたか差に関係してきます。
会社が直接人材を募集すると、時間とお金がかかる上、確実に人員が確保できる保証もありません。
しかし派遣会社なら、「こんな人がほしい」と伝えれば、あとは派遣会社がすべてを行ってくれます。
派遣社員の時給が高いのは、勤務する企業にとっての「使い勝手の良さ」が給与に上乗せされているからなのです。
<関連記事>:薬剤師のお給料、手取りでどれくらい?
薬剤師の派遣先、時給が高いのはどこ?
正社員でもそうですが、どこで働くかによって派遣薬剤師の時給には差が出てきます。
派遣薬剤師の平均的な時給相場をまとめました。
薬剤師の職場として代表的な、ドラッグストア・調剤薬局・病院を比較してみましょう。
派遣薬剤師の平均時給はどれくらい?
派遣薬剤師の平均的な時給は、2,300円~2,800円程度となっています。
フルタイムで働いた場合は月に36万円~45万円くらいで、年収ベースでは450万円~540万円になるようです。
ちなみに、薬剤師全体の平均月収(35万円)を時給に直すと、およそ2,200円です。
正社員の薬剤師よりも派遣薬剤師のほうが給与が高くなることも、十分考えられるでしょう。
時給が高い職場はどこ?
薬剤師のなかでも、時給の相場が高いのが調剤薬局やドラッグストアです。
平均時給は2,800円~3,500円程度となっており、単純計算では正社員よりも収入が多くなります。
病院の平均時給は2,700円~3,000円程度で、調剤薬局などと比べるとやや低くなっています。
求人数でみると調剤薬局が圧倒的に多く、次いでドラッグストアとなっています。
派遣社員で働くなら、調剤薬局やドラッグストアがおすすめと言えるでしょう。
働く地域が時給を左右する!
薬剤師の時給は、勤務先だけでなく勤務する地域によっても大きく変わってきます。
一般的に東京などの都市部は時給が高いと思われがちですが、薬剤師の場合はやや異なります。
東北や九州などの地方では、薬剤師が圧倒的に足りていません。
そのような過疎地域の場合、薬剤師のニーズは非常に高くなるため、かなりの好待遇で勤務することが可能になります。
とくに山間部や離島など、生活の利便性が低い地域ほど時給が高くなります。
勤務地にこだわりがない人にとっては、かなりおすすめでしょう。
<関連記事>:薬剤師の年収は今後どうなるの?
薬剤師、派遣で働く場合の注意点は?
メリットが多い派遣薬剤師ですが、勤務にあたってはいくつか注意したい点があります。
働き始めてから後悔しないように、デメリットについてもしっかり理解しておきましょう。
「時給がいい=年収が高い」は間違い?
派遣薬剤師の時給は正社員よりも高く設定されていることが多いですが、それ以外の面はどうでしょうか。
派遣先の職場はもちろんのこと、雇用されている派遣元の会社からも、賞与がないことが多いです。
また交通費も時給に含まれていることも多く、家族手当や住宅手当、退職金制度などもない会社がほとんどです。
派遣社員の場合、時給以外のお金は当てにできないと考えましょう。
時給や、時給ベースの月給が高くても、年収・生涯年収といった視点では、正社員のほうが高いケースが多いのです。
派遣社員としての薬剤師勤務は、子育て中の主婦や定年退職後の再就職先などでは魅力的な待遇といえるでしょう。
しかし派遣社員で長期間勤務を想定すると、一概に派遣のほうが年収が高いとは言い切れません。
同じ職場には長期間勤められない
派遣社員の場合、基本的に雇用期間が最長3年までと定められています。
また同一店舗や系列店舗などでは、退職後1年間は勤務することができません。(ただし、定年退職後の再雇用のケースは除きます。)
<参考サイト>:労働者派遣法が改正されました|厚生労働省
同じ職場で長期間勤務することはそもそも派遣労働の趣旨ではないためです。
派遣会社を変えずに派遣先の職場を変える場合は有給休暇なども引き継げますが、派遣会社そのものを変えてしまうと、すべてがリセットされてしまいます。
長期で勤めたいと考えている人は特に注意しましょう。
まれに、派遣先の会社から直接雇用を打診されることもありますが、実は待遇が下がるというケースも存在しています。
このまま派遣社員として働いたほうが得策なのかを、しっかり見極める必要があります。
<関連記事>:薬剤師派遣の法律に関するQ&A、注意点はある?
派遣切りの可能性がある
派遣社員の場合、契約期間が通常は2~3ヶ月と定められています。
満了期間に近づくと契約更新を行い、結果的に数年間の勤務となるのですが、この契約更新は100%確実に行われるものではありません。
もともとは、一時的に不足する人材を補うのが派遣社員の本質的な考え方です。
これまで順調に契約更新が行われていたとしても、突然契約終了を告げられることもあり得ます。
契約更新なしの告知がされるのも満了1か月前のことが多く、非常にシビアです。
かつて「派遣切り」が話題になりましたが、「薬剤師だから派遣切りにはあわない」とは言い切れません。
また、派遣契約が終了してすぐに次の職場が見つかるとも限りませんよね。
派遣社員は雇用が不安定であり、常に失業のリスクがあると理解しておきましょう。
派遣先企業が派遣会社に支払う費用はかなりの高額になります。
特にパートタイムの場合は、できるだけ直接雇用のパートやアルバイトを雇いたいのが本音です。
薬剤師としてしっかりと働きたい人は、派遣社員で働くのは一時的と割り切り、いつ派遣切りにあっても大丈夫なように備えておくのが得策と言えるでしょう。
- 派遣社員で働く場合、時給ベースでは正社員よりも高くなることが多い
- 派遣社員には賞与や退職金などがないため、年収では正社員より低くなりがち
- 調剤薬局・ドラッグストアや、人手不足の地方での時給が高い
- 派遣社員としては最長3年までしか勤務できない
- 突然派遣切りや契約打ち切りがあり得るので雇用が安定しない
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