病院薬剤師は、医師や看護師といった他の医療関係者と働くことになります。
しかし、特に看護師との関係に悩んでいる病院薬剤師は少なくありません。
では、なぜ病院薬剤師と看護師の間で悩みやトラブルが発生するのでしょうか。
主な原因をふまえ、上手に関係を築くためにできることを考えていきましょう。
目次
病院薬剤師は疎外感を感じやすい?
最近では、「チーム医療」という考え方が広く知られるようになりました。
しかし現実には、チームの一員として働いているはずの病院薬剤師が疎外感を感じていることも少なくありません。
病院薬剤師が疎外感を感じる理由について、薬剤師の立ち位置を中心に見ていきましょう。
病院における薬剤師の役割
病院薬剤師が担う役割は多岐に渡ります。
調剤薬局で働く薬剤師のように、院内で調剤を行うこともありますし、院内で使用する薬剤や注射薬を調製するという業務もあります。
また医師や看護師、理学療法士などといった他の医療専門職の人たちと一緒にチームを組み、その病院にかかっている患者さんの治療やケアを行う「チーム医療」に参加することも多くあります。
そのため、調剤薬局やドラッグストアで勤務する薬剤師よりも、病院薬剤師は医師や看護師など、他の医療専門職との連携が多くなります。
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病院では薬剤師の地位が低い?
薬剤師は薬剤の知識をもって患者さんの治療やケアに貢献していますが、実際に病気を診断したり治療したりするのは医師であり、直接患者さんの対応をするのは看護師です。
このように、病院薬剤師は直接患者さんの治療やケアに当たる機会が少ないため、医師や看護師よりも下の地位に見られがちです。
また、病院薬剤師の人数は看護師の人数よりも圧倒的に少ないという職場がほとんどです。
そのため肩身の狭い思いをしたり、疎外感を感じることも多いようです。
薬剤師・看護師間のトラブル、原因は?
薬剤師と看護師との間で、悩みやトラブルが発生しやすいのはなぜでしょうか。
両者の間で起こりやすい問題について見ていきましょう。
仕事の境界線があいまい
本来、薬剤師と看護師の業務は異なるものです。
薬剤師は調剤や服薬指導、薬剤管理などを行う薬物療法の専門家ですし、看護師は心拍数や血圧、体温の確認といった患者さんのバイタルチェックや療養上のサポートを行う専門家です。
しかし実際の職場では、薬剤師が製剤した注射液を看護師に渡したり、患者さんに薬効や副作用の聞き取りを薬剤師も看護師も行ったりと、一部の業務内容が重なることも多くあります。
この業務内容の重なりがトラブルを生む一因となるのです。
すると看護師が「急いでいるのに薬剤師の仕事が遅くてイライラする」となることもありますし、薬剤師が「本来は自分たちの仕事なのに、看護師が中途半端に関わるせいで逆にやりずらい」と感じることもあります。
このように、薬剤師の業務と看護師の業務に一部重なりがあると、仕事のやり方などで不満が出やすくなります。
互いの業務の境界線があいまいだと、思わぬトラブルに発展してしまう恐れもあるのです。
コミュニケーションが取りづらい
チーム医療が重要視されている現在の医療現場ですが、普段の業務において薬剤師と看護師が接触する機会はそれほど多くありません。
このような職場環境だと、薬剤師は看護師の、看護師は薬剤師の業務を理解していないこともありますし、互いにどのような人が働いているのか分かっていないことも多々あります。
薬剤師と看護師がこのような関係にあると、普段の業務では問題なくても、いざ薬剤師と看護師との連携が必要となったときに、上手くコミュニケーションが取れず、互いにかみ合わなくなってしまうことも多くなります。
コミュニケーションの取りづらさが、薬剤師と看護師との関係の悪化の一因となるのですね。
多忙からくるイライラ
看護師が人手不足であることはよく知られている事実ですが、これは病院薬剤師も同様です。
つまり、看護師も薬剤師もともに多忙な毎日でイライラを感じてしまうことが多いのです。
また病院に勤める以上、看護師も薬剤師もミスが許されません。
さらに長時間立ちっ放しで業務にあたる事もあるため、看護師も薬剤師も心身ともに疲れてしまいがちです。
このようにハードな職場では、互いにピリピリした雰囲気になってしまうこともあります。
なかには、看護師から「薬剤師はヒマでいいわね」「少しくらい仕事を手伝ってくれてもいいんじゃないの?」といったことを言われてしまいトラブルになったという例もあります。
<関連記事>:調剤薬剤師から病院薬剤師への転職は大変?
病院薬剤師と看護師が上手くやっていくには?
何かと関係がこじれやすい病院薬剤師と看護師ですが、上手く付き合っていくにはどうすればよいのでしょうか。
病院薬剤師が看護師と良好な関係を築くためのポイントを見ていきましょう。
看護師の立場を尊重する
薬剤師は薬学を究めたプロですが、看護師も患者さんのケアをはじめとする看護のプロです。
相手の仕事を認め、プロとして看護師を尊重する気持ちを常に表現しましょう。
それでも、なかには厳しい態度を示す看護師もいるかもしれません。
しかし、看護師は常に医療現場の最先端にいるため、多少ピリピリするのは仕方ありません。
態度や言葉遣いが悪いと感じても、職場環境やその人が担当する仕事に原因があるかもしれないのです。
たまにツラく当たられてしまっても、その言動がその人本来の人格によるものだと安易に判断しないようにしましょう。
看護師の仕事について理解する
病院薬剤師は激務であることが多く、「自分の仕事をこなすだけで精一杯」と感じる人も多いでしょう。
しかし病院薬剤師は、病院におけるチーム医療の一員でもあります。
薬剤師としての仕事に集中するだけでなく、周りを見渡して看護師をはじめとする医療専門職の仕事をしっかりと理解することが大切です。
そして、それぞれの仕事を理解した上で、自分の言動が相手に迷惑をかけていないか、不快に感じさせていないか、改めて考えてみるとよいでしょう。
いわゆる「空気を読む」ということが重要なのです。
<関連記事>:病院薬剤師のやりがい・魅力は?
積極的にコミュニケーションをとる
病院によっては、病院薬剤師と看護師との接点がほとんどなく、いざというときに連携が取れないというケースもあります。
また、薬剤師と看護師は双方ともに激務であるため、互いの仕事内容や病院内での役割について詳しく理解していないこともあります。
仕事以外の雑多な会話でも、一度打ち解けて話すことができれば、いざという時のコミュニケーションがより柔軟になります。
下からの姿勢になる必要はありませんが、謙虚で誠実な態度を心がけ、積極的に接点を持つようにしましょう。
このような努力をしても、看護師との人間関係が改善されない場合は、転職を考えてみるのも良いかもしれません。
薬剤師専門の転職支援サイトを利用すると、求人先の職場環境や人間関係の情報を事前に得ることができますし、転職エージェントが求人探しや求人先とのやりとりを代行してくれることもあります。
転職する際には薬剤師専門の転職支援サイトを賢く活用しましょう。
- 病院薬剤師は「チーム医療」に参加するという面もあり、医師や看護師との連携が欠かせない
- 薬剤師は直接患者の治療に当たることが少なく、医師や看護師からは下の地位に見られがち
- 薬剤師と看護師は仕事の境界線があいまいで、互いに激務のためトラブルも起こりやすい
- 看護師と上手く付き合うには、看護師の立場を尊重し、仕事について理解することが重要
- 日頃からコミュニケーションを積極的に取ることを心がける
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