みなさんは「麻薬取締官」という職業を知っていますか?麻薬取締官とは薬物の不正使用の捜査や不正麻薬の取締りなどを行なう厚生労働省の職員を指します。映画やテレビドラマでは「麻薬Gメン」や「マトリ(麻取)」と呼ばれることもあるので、耳にしたことがある人もいるかもしれません。
麻薬取締官は厚労省の麻薬取締部に所属する国家公務員です。この職業に就くには薬学の知識が不可欠とされ、多くの薬剤師が捜査官として活躍しています。
ここでは薬剤師の求人先のひとつとして、麻薬取締官の仕事や給料について詳しくまとめています。薬剤師のちょっと珍しい求人先として、また世の中のために貢献できる職業として、麻薬取締官に注目してみてはいかがでしょうか。
目次
麻薬取締官の仕事・給料、役割とは
仕事内容は?
薬物犯罪の捜査
「薬物関連5法」に基づき、麻薬・向精神薬・あへん・大麻・覚せい剤などの薬物犯罪に関する捜査を行ないます。国内の関連犯罪のみならず、国外から密輸される違法な薬物の捜査も麻薬取締官の仕事です。
薬物犯罪の情報収集
薬物関連の犯罪は潜在性が強いため、麻薬取締官は常日頃から情報収集を行なっています。新聞・雑誌・インターネットなどからの情報収集をするとともに、投書・通報・外国捜査機関からの情報などをデータベース化しています。
薬物の分析・鑑定
捜査部門とは別に薬物の鑑定部門の仕事もあります。中立的な立場で、薬物の精度の高い鑑定試験を行ないます。ほかに、容疑者の薬物使用歴を明確にする毛髪分析や不正薬物のプロファイリング分析など専門分野の研究も実施します。
指導・監督・防止
麻薬取締官は犯罪捜査を行なうだけでなく、関係者への指導や監督、不正薬物使用の防止活動も併せて行なっています。また不正製造、不正ルートへの流出防止などの活動も担当します。こうした活動の一環として中毒者への相談対応、再乱用を防ぐアドバイスなども麻薬取締官の仕事のひとつです。
給料・年収は?
麻薬取締官は厚生労働省に所属する国家公務員であるため、給料(年収・月収)は公務員の行政職の給与体系が適用されます。給料額は年齢や経験年数によって違いがありますが、そのおおよその金額を見てみましょう。
20代では年収370万円(月収23万円)、30代では496万円(31万円)、40代では754万円(47万円)、50代では864万円(54万円)程度が相場です。平均的な年収は約621万円(月収38万円)となります。
どんな役割があるの?
私たち一般市民は「麻薬」という言葉を聞くと、「自分とはあまり関係のないもの」と思いがちです。しかし昨今では家庭の主婦や学生であっても、比較的容易に違法ドラッグなどの薬物を入手できる時代になっています。
麻薬取締官は不正薬物を扱う犯罪者を取り締ると同時に、一般市民が薬物乱用に陥らないよう防止するという役割も担っています。麻薬や不正な薬物がない健全な社会を実現するためにも、麻薬取締官という存在は欠かせないものとなっているのです。
麻薬取締官になるには?
麻薬取締官は厚生労働省に所属するため、国家公務員試験の一般職試験に合格する必要があります。この試験に合格したうえで、厚労省の求人募集に応募して採用されれば麻薬取締官になることができます。
求人応募条件は以下のとおりです。
・国家公務員一般職(大卒程度)の「行政」「化学」等の合格者
・薬剤師または薬剤師国家試験合格者(合格見込みでも可)
・年齢が29歳以下、麻薬取締官の職務に支障がない健康状態の者
麻薬取締官の求人(採用)情報は、「麻薬取締官ホームページ」で確認することができます。
麻薬取締官に求められるもの
薬学の知識
不正薬物の取締りを行なうという職務上、麻薬取締官に薬学の知識は欠かせません。採用条件には薬剤師(または国家試験合格者)とあり、すでに薬剤師として就業しているなら特別な問題はないものの、新たな職務に必要な知識を身に付ける必要があります。
法律の知識
麻薬取締官はいわゆる「薬物5法」という法律に基づいて職務を行ないます。5法とは「麻薬及び向精神薬取締法」「あへん法」「大麻取締法」「覚せい剤取締法」「医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」などです。
語学力
麻薬取締官は外国人犯罪者の捜査を行なったり、諸外国の関係機関と協力して行動する機会があるため、英語・米語などの語学力が求められます。最近では英語圏以外の犯罪者も増えてきたため、さまざまな言語を身に付けておく必要も出てくるでしょう。
体力・逮捕術
すべての麻薬取締官が捜査担当に配属されるわけではないものの、職務に支障がない程度の健康な身体と体力は必要です。麻薬取締官に採用された後は研修が行なわれますが、逮捕術や拳銃射撃訓練が含まれていることは頭に入れておきましょう。
PC操作スキル
現代の犯罪捜査ではインターネットが重要な役割を占めています。麻薬取締官の仕事でも、スマートフォンだけでなくPC(パソコン)の捜査スキルは欠かせないもののひとつでしょう。ネット検索や閲覧方法だけでなく、ワードやエクセルなどのソフトの操作も知っておくと便利です。
麻薬取締官を目指す際の注意点
麻薬取締官は薬学の知識や薬剤師としての経験が活かせる職業です。ただし、調剤薬局や病院に勤務するのとは少し違う注意点もあります。
危険性のある職務である
所属部署にもよるものの、麻薬取締官の仕事には大なり小なりの危険性があります。一般的な薬剤師の仕事から転職する場合は、犯罪捜査や潜入捜査を行なったり、犯罪者と関わり合う可能性があることを理解しておく必要があるでしょう。
全国規模の転勤がある
麻薬取締官は厚労省の職員ですが、勤務先は全国に及んでいるため転勤が多いという特徴があります。国内の麻薬取締部は北海道から九州までの約9カ所です。取締官として人脈や情報網を広げ経験を積むという目的もあり、転勤は多めと考えておいたほうがいいでしょう。
求人募集はあまり多くない
麻薬取締官には定員があり、欠員が出たときだけ求人募集が行なわれます。そのため、定期的に求人募集があるわけではありません。標準的な採用実績は全国で15名程度と少なめですので、常に採用情報をチェックしてチャンスを逃さない努力が必要になります。
薬剤師の求人先は麻薬取締官以外にもたくさんあります。もし薬剤師の方で転職を考えているなら、薬剤師専門の転職支援サイトに相談してみてはいかがですか。
薬剤師専門の転職支援サイトを利用すると、さまざまな魅力のある求人情報を知ることができます。薬剤師の転職に詳しい専任アドバイザーが親身に相談に応じてくれますので、積極的に活用してみてください。

- 麻薬取締官不正薬物の取締りを行なう仕事
- 身分は厚生労働省に所属する国家公務員
- 主な仕事は薬物犯罪の捜査と薬物鑑定など
- 平均的な年収は600万円(月収38万円)程度
- 国家公務員試験に合格しないと求人に応募できない
- 薬学や法律の知識、語学力などのスキルが必要
国家公務員でなくとも薬剤師の資格を持っていれば応募はできますか?