処方ミスをした時の薬局の対応は?調剤過誤の慰謝料は?

薬剤師,処方ミス,調剤過誤

処方箋を受け取って、調剤して、患者に渡す。

薬剤師は何度も何度もこの流れを繰り返しています。


細心の注意を払って慎重に作業が行われますが、ごくまれに薬剤師が誤った薬を調剤・処方してしまうことがあります。

なぜそのような事態が発生するのでしょうか?


また、万が一そのような状況になってしまったら、一体どのように対処すべきなのでしょうか?

この記事では調剤・処方ミスのパターンを解説するとともに、ミスを事前に防ぐ方法や万が一ミスが起きた際の対処法について紹介していきます。


調剤・処方ミスには、どんなケースがある?

調剤,処方ミス

調剤・処方ミスには、いくつかのパターンがあります。

どんな時にミスをする可能性が高いのか、そのパターンを覚えておきましょう。


ここでは調剤・処方ミスが起きやすい4つのケースを、実際の事例とともに紹介していきます。

その1 数量間違い

調剤・処方ミスで最も多いのが、数量間違いのケースです。

同じ薬でも用量の異なるものと取り違えたり、包装する際の設定を誤ったり、といった場合がこれにあたります。


数量間違いが起こると、最悪の場合、患者が死に至る可能性もあります。

実際に起きた事例を紹介しましょう。


ある患者に「ワーファリン0.5mg錠 1錠」で処方するはずだったところを、薬剤師が間違えて「ワーファリン5mg錠 1錠」で処方してしまいました。

その結果、下血・皮下出血などの症状が出るようになり、患者は約1ヵ月後に心肺機能不全で死亡しています。


この事例では、処方する量の確認を怠ったということで、薬剤師2名が業務上過失致死の疑いで書類送検されています。

<関連記事>:薬剤師の給料・年収について

その2 薬剤の取り違え

非常によく似た名前の薬がある場合に、それらを取り違えてしまうケースです。

かつて、血圧を下げる「アルマール」(※現在は『アロチノロール』に販売名を変更)と、血糖値を下げる「アマリール」を取り違える事例が複数報告されました。


また、増血剤の「フェルムカプセル」を処方するはずだった妊婦に対し、鎮痛剤の「フルカムカプセル」を誤って処方した事例もあります。

その結果、妊婦の容態が悪化し、1ヵ月間入院して治療を受けることになりました。


この事例では、妊婦に対し慰謝料266万が支払われています。

その3 疑義照会不足

「疑義照会」というのは、処方箋について疑わしい点があった際に、それを発行した医師等に問い合わせて確認をすることです。

疑義照会は、法律によって薬剤師の義務と定められています。(薬剤師法第24条)


薬剤師が調剤・処方する前にチェックする主なポイントは、「薬剤名に間違いはないか」「注意書きやただし書きが抜けていないか」「用量が適正か」「飲み合わせに問題はないか」などです。

患者の薬の服用歴や症状の経過、副作用やアレルギーなどを考慮しながら、こういった内容について処方箋に疑わしい点がないかどうか確認をしていきます。


もし「これは間違いではないか?」と思うようなことがあったら、処方箋を出している医師等に確認しなければなりません。

また、問い合わせて確認が取れるまでは調剤を行うことができません。


実際に起きた事例では、本来10倍に薄めて調剤するはずの薬を、ただし書きが抜けていたために薄めずそのまま処方してしまった、というものがあります。

また、医師が処方箋を書く際に胃薬の「アルサルミン」と抗がん剤の「アルケラン」を間違えてしまい、薬局側でも疑義照会することなく処方してしまった、ということもありました。

<関連記事>:調剤拒否が許される「正当な理由」って何?

その4 補充間違い

薬剤を補充する際に別の薬と取り違えてしまい、それによって誤った薬が処方されるというのがこのケースです。

薬剤の形状や色が似ている場合は注意が必要です。


実際に起きた事例では、抗アレルギー薬を小瓶に補充しようとした薬剤師が、誤って精神安定剤を補充するミスが起きています。

この抗アレルギー薬も精神安定剤も、白い顆粒状の薬でした。


結果、誤って処方された薬を服用した子どもたちが意識障害を起こす事態になりました。

この時飲んでいた薬の量は、子どもが服用できる精神安定剤の量をはるかに上回っていたのです。


こちらの事例では、業務上過失傷害の容疑で捜査が行われ、病院の営業停止処分の検討もされました。


調剤・処方ミスが起きた時の対応は?



調剤・処方ミスが起きると、患者の体に悪影響を及ぼし、最悪の場合死に至ることもあります。

そのため、調剤・処方ミスが発覚した際には速やかに対処しなければなりません。

処方ミスの疑いが出たら

処方ミスが疑われる場合には、まず薬局管理者と経営者へ速やかに報告します。

処方ミスは患者やその家族からの連絡によって発覚することが多いです。


後々トラブルになる可能性もあるため、この時に受けた連絡の内容は、必ず詳細にメモしておきましょう。

患者・家族への対応は?

「患者・家族を早く安心させてあげたい」という気持ちになるかもしれませんが、事実確認できたこと以外は言わないようにします。

患者・家族を励まそうとして曖昧なことを言うと、あとからトラブルに発展しかねません。


事実確認が終わっていないことについて訊かれた場合、今はまだ分からない旨を正直に伝えましょう。

中途半端な情報は、かえって患者や家族を混乱させてしまうことになります。

関係各所への報告

調剤・処方ミスが起きたら、被害の有無にかかわらず、まずは薬剤師会にそのことを報告しましょう。

ミスによって患者に被害が出ている場合には、薬剤師会と連絡を取りながら対処していくこともあります。


そのほかにも、状況に応じて関係各所への連絡が必要です。

医療機関からの問い合わせによって調剤・処方ミスの疑いが出てきた場合、薬局内で事実確認をした上で回答をします。


また被害の範囲や程度によっては、行政への報告や報道機関とのやりとりが必要になる可能性があります。


調剤・処方ミスを防ぐには?



ここまで、処方・調剤ミスが起きた場合の対応を解説しましたが、何よりも大切なのは、こういったミスを事前に防ぐことです。

では、ミスを防ぐためにどんなことができるか見ていきましょう。

誤認の多い医薬品や含有量を把握しておく

実際にあった事例の紹介にも出てきましたが、「0.5mg」と「5mg」、「フェルムカプセル」と「フルカムカプセル」など、間違えやすそうなものを把握しておきましょう。

そして薬品棚の方にも注意書きをしておくと、調剤する際に目に付くので効果的です。


薬品の補充間違いを防ぐためには、中身と入れ物が一致しているか確認するくせをつけるのが大切です。

同じ色、似たような形状の薬品はたくさんありますから、補充する前に毎回確認するくせをつけてミスを防ぎましょう。

疑義照会をためらわない

処方箋で気になる点があったら、ためらわずに処方した医師へ質問しましょう。

普段から医師や医療機関と良い関係を築けるよう心掛けていると、疑義照会もしやすくなるかもしれませんね。


初めて来る患者だけでなく、常連の患者にも注意が必要です。

処方内容がずっと同じだと気が緩んでしまい、薬の種類や量が変わっていたのを見落としてしまう可能性がありますし、医師の方でも処方箋を間違えて書いている可能性があります。


服薬指導の際に、医師から薬について何か話があったか質問してみましょう。

もし薬を変えるような話をしていたのに以前と処方箋内容が変わっていなかったり、逆に話がなかったのに内容が変わっていた場合は、疑義照会をすることでミスを防ぐことができます。

<関連記事>:薬剤師はどんな人が向いてる?適性・性格について

重大な健康被害を招く医薬品を区別しておく

あらかじめ重大な健康被害を招くことが分かっている薬品については、分かりやすい印をつけたり棚に色をつけたりして、他の医薬品とははっきり区別しましょう。

単純ですが、そうすることで処方する際に自然と注意するようになるでしょう。



<この記事のまとめ>

  • 処方ミスには、数量の間違いや薬剤の取り違えなどがある
  • 処方ミスによって患者に大きな被害が出て、死に至ったケースもある
  • 処方ミスに気がついたら、すみやかに薬剤師会その他必要なところへ連絡する
  • 処方箋で気になることがあったら、迷わず医師に確認を
  • 間違いやすい薬剤などは、目印や注意書きをつけて処方ミスを防ごう


薬剤師の転職サイト、おすすめは?



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です